BL漫画holic（別館・サブブログ）: 『5人の王』第6巻ネタバレ感想【絵歩（原作：恵庭）】

2021年10月7日木曜日

『5人の王』第6巻ネタバレ感想【絵歩（原作：恵庭）】

5人の王 6
レーベル：ダリアコミックス
2021/03/22/フロンティアワークス

蔓延する疫病の原因を探るべく奔走するセージとウィロウ。しかし、疫病はある人物の策略によるものだった。危機的状況に陥ったセージは、さらに『過去』に飛び、先代の青の王・エールの死と『王の禁忌』の真相を知る。命をかけてでも守りたいという強い想いと悲しい事実にセージは――。

単行本の構成

・第29話～33話
・あとがき＆イラスト1P

今回で過去編が完結。その前にグリニッジがまさかの闇落ち。グリニッジを助けるために過去に飛んだセージだけど、実はグリニッジが悪の枢軸だったという筋書き。祖国を滅ぼされた復讐と祖国再建のために西方の不満分子とつながっていたみたいなのですが、うーん、イメージが激変。

侵略国のシェプロンを恨んでいるとはいえ、医者なのに疫病を蔓延させて何の罪もない人々を大量に殺戮するというやり方はあまりに非人道的で卑劣。同情の余地がないのが悲しい。またしても魅力的なキャラが尻すぼみになって退場（生きてるけど、キャラ的には死んだも同然という意味で）...。

過去編ではセージが初代王たちの過去へ飛んだ後、先代のアジュール王（エール）がいる青の宮殿へ。そこでセージは初代王たちの恋の顛末が後代の青の王（エール）や紫の王を死に追いやる状況を作り出していく負の連鎖を目の当たりにし、二人を助けようとするが・・・。

初代の紫の王の悲恋は神話チックで解釈が難しいところ。

初代の王たちは青の王を除いて誰もが女神のように美しい紫の王の虜に。紫の王は青の王に想いを寄せていたが、青の王にはテンランという愛する女性がいて・・・。

紫の王は人の心を操る強大な力を持っていたにも関わらず、青の王の心を操ることだけはしたくないと力を封印していたせいで黒の王の餌食に。

中央を治め、一番大きな権力を持つ黒の王は残虐な王で、紫の王の青の王への一途な想いを知りながら、もっともダメージが大きい残酷なやり方で紫の王を辱めるのだった。愛する青の王や他の王たちや臣下の目の前で凌辱...。

青の王の幸せを願ってテンランを庇う形で黒の王の側女になった紫の王は、惨めな現状を受け入れるために、王同士は愛し合えないとの暗示を自分にかけるのだった。それが「王の禁忌」の真相。

初代の紫の王はどこまでも自己犠牲的な人物。自分の幸せよりも愛する青の王の幸せを優先するのは心情的に理解できるのですが、そのために全てを背負い込み、黒の王の暴走を止めずに言いなりになるというのはなんだか違う気が。でもそういう不条理なところも神話らしいのかなとも思ったり。

次はもう一つの過去、先代のアジュール王（エール）の死の真相。「王の禁忌」は初代の紫の王が青の王への未練を断ち切るために自分に暗示をかけただけで本当は存在していなかったのだけど、紫の王の暗示は王宮にいたすべての人に及んでしまい、意図せず後代の王たちをも巻き込んでいくことに。

先代の青の王・エールと紫の王が愛し合う仲になると、「王の禁忌」を恐れたルリが紫の王を刺殺。うーん、そのときのルリの言動を見る限り、「王の禁忌」を恐れたというより、嫉妬に狂った末の行動（錯乱状態）にしか見えませんでした。

その場に駆け付けたエールが神の力で紫の王を蘇生しようと試みる場面へ。エールが自分の命と引き換えに紫の王を生き返らせようとしていることに気づいたアージェントが止めようとするが、成り行きを見守っていたセージがエールに味方してアージェントを妨害。

紫の王が亡くなってしまうと未来が変わってしまうことを恐れたセージは、アージェントを心の声で吹き飛ばし、エールと力を合わせて紫の王を蘇生する。力を使い果たしたエールは、亡くなる寸前に皆の幸せのために自分に関する記憶を消してほしいとセージに依頼する。そして、もう一つの頼みは「王の禁忌」が本物だと皆に思い込ませてほしいというもの。

ドラマチックで読み応えがある展開が続いてますが、疑問点もちらほら。事後処理としてエールに関する記憶を消すのは分かるのですが、もう一つの依頼内容がよく分からない部分。紫の王を刺殺したルリがエールの死後に罰せられるのを阻止するために「王の禁忌」が本物だと思い込ませる暗示を王宮内にいる全員にかけてほしいというもの。

エールの死と引き換えに紫の王は生き返ったんですよね。それなのに、わざわざ「王の禁忌」を持ち出す必要があるのかなと。ルリが紫の王を刺したところを目撃した人物とルリ本人と紫の王の記憶を消すだけで十分な気がするのですが...。

ルリ一人を助けるために再び「王の禁忌」を持ち出し、それが現在のセージと青の王を縛っていくという、負の連鎖が続いています。

そして、忘れてはいけないのがウィロウ。セージがまたヘマをしてウィロウを過去に置き去りにしてしまっているんですよね。早く迎えに行ってあげて😅