2023年9月1日/大洋図書
時は休戦下、ルッケンヴァルデ機甲学校での日々へと遡る。
前の大戦で敵対関係にあった西方へ留学したタキ。
その彼を秘密裏に警護し監視するよう任じられたクラウス。
学友として知り合い、少しずつ交流を深める二人だが、編入早々の夜間演習ではタキを巡る謀略が待ち受けていて……!?
単行本の構成
・表題作第18話~24話
・イラスト入りあとがき1P
・ケモ耳ver.「百日の薔薇 肉球編 クラウスのにゃんこ観察日記2」4P
・イラスト入りあとがき1P
・ケモ耳ver.「百日の薔薇 肉球編 クラウスのにゃんこ観察日記2」4P
第4巻は廃刊になったアクアで連載されていた本編の続きとihr HertZに加筆修正されて掲載された分、雑誌や同人誌に掲載されたケモ耳番外編の一部が収録されています。
物語の主な舞台はクラウスの出身国の西方連合と、タキの祖国「極東の国」の第十五師団。タキがルッケンヴァルデ機甲学校に留学する少し前に西方連合とタキの祖国は国交が回復したものの、それから数年経過してクラウスがタキの騎士になった頃に再び関係が悪化。
時間軸は行ったり来たり。3巻に引き続き、ルッケンヴァルデ機甲学校編とクラウスがタキの騎士となって極東の国に赴いてからの出来事がシャッフル形式で描かれています。
冒頭は譫妄状態のクラウスに思いっきり身体をつかまれ、荒々しく抱かれるタキ😣💦
すぐに場面が変わり、大内裏八省院での戦勝祈願の様子。中間地帯に赴いたタキの穢れが宮中で問題になる中、天皇は根拠のない噂にすぎないと参内を許可し、粛々と清め邪気払いの儀を執り行うが、タキは何事もなかったかのように振舞う天皇に失望の念を禁じえず...。
儀式を終え、クラウスと出会った思い出の森を公家装束で一人歩くタキ。そこに姿を見せたのはカツラギ卿。カツラギ内務副大臣は既刊の単行本には出てこず、アクア掲載の12話から登場する曲者キャラ。
探していたと言いながら、とりとめもない話をはじめるカツラギに用件は何だと問うタキ。飄々とした態度で顔が見たかっただけと返答するカツラギ。犬を飼って半年の、主人の顔ってものをねと言い足し・・・。
くだらない戯言を許すほど、あなたとは親しくないと不快そうに去っていくタキ。午後の直会への参加をキャンセルしたタキは、すぐさまレイゼン領の冬期別邸へ。
別邸に戻ったタキが一番最初に向かったところはスグリ侍医が管轄する病棟。2階には負傷兵たちが入院しており、軽傷のアズサの様子と重傷のクラウスの容態を問うタキ。案内された地下室にはクラウスが包帯で手首をベッドの支柱に縛られ、モルヒネと抗生剤を投与され、昏睡状態で横立っていて・・・。
痛ましそうにクラウスを見つめ、そっと彼の髪に触れるタキ。その瞬間、激しく何度も痙攣するクラウス。二人きりにしてほしいとスグリ侍医に頼むタキ。クラウスからタキを近づけないように言われていたのに地下室に入れてしまったことを苦悶の表情で告げ、二人きりにするために部屋から出ていくスグリ侍医。
ここからまた過去に飛び、ルッケンヴァルデ機甲学校時代のプチエピソードに。まだあどけなさが残る18歳のタキと御守り兼監視役のクラウスと学友たちの平和なやりとり。2016年発売の同人誌「Thorn Crown II 」収録の2ページほどのタキの回想シーンを6ページに加筆修正。
再び地下室の場面へ。手首をベッドの支柱に何重にも縛られて薬で眠らされているクラウスを不憫に思い、クラウス本人がスグリ軍医に求めた拘束を解こうとするタキ。部屋には刃物類がなく、固く結ばれた包帯に苦戦。クラウスの哀れな姿にポタポタと涙がこぼれるタキ。
クラウスに跨って唇に血がにじむほど強く包帯に噛みついて結び目を引きちぎったタキは、支柱から解放されたクラウスの手を愛しそうに握りしめながらベッドに添い寝して・・・。
次の瞬間、いきなり覚醒したクラウスが凶暴化。ベッドに押し付けられ、からだを思いっきり噛まれるタキ。部屋の前の廊下で椅子に座って待機していたスグリ侍医が大きな音に驚いてドアを開けようとするが、内鍵がかかっていてどうすることもできず、タキは野獣のようなクラウスに乱暴に服を脱がされ・・・。
クラウスに荒々しく抱かれるタキ。
回想シーン:故郷の薔薇摘みにタキを誘うクラウスのおだやかな笑顔...。昔のことを思い出して涙ぐむタキ。
うめき声が漏れないようにシーツを噛み、苦悶の表情をうかべながら、荒々しく求めてくるクラウスを受け入れるタキ。クラウスが不敬罪で処分されるのを恐れ、されるがままのタキを譫妄状態のクラウスが野獣のようにむさぼる痛々しいシーンが25ページに渡って克明に描かれています。
ようやく限界に達したクラウスがあそこを引き抜き、意識を失ってタキの上に倒れこみ・・・。
クラウスを抱きしめた手が真っ赤に染まり、自分の手を愕然と見つめるタキ。クラウスの肩のケガが想像以上に深刻だったことにショックを受けるタキ。悲惨な現状に思わず嗚咽を漏らしながらも、自分がクラウスのためにできることを自問自答したタキは・・・。
後半はルッケンヴァルデ編の続き。 ルッケンヴァルデ編も緊迫した局面に突入。ハルトマンの部下と極秘会談する商社マン(?)のマキシマ。タキの失脚あるいは排除を望む勢力がルッケンヴァルデまでやってきたようで...。カツラギ卿の出方をうかがうマキシマとマキシマの件をハルトマンに報告する幹部たち。
過去編もシリアス味を帯びてきましたが、帰国後の状況との違いは救いがあること。留学時代のエピソードは基本的に学園モノのノリ。最初は心の距離があった二人が日々のやりとりの中で少しずつ絆を深めていく様子やタキの成長過程がポジティブに描かれています。
週末のたびに級友と離れて二人だけで街に出かけ、のんびりとした時間を過ごす二人。市場で買い物をしたり、クラウスが馴染みの食堂の厨房を借りてタキに食事を作ったり。だけどそれは純粋なお出かけとは言い難く、クラウスにとっては敵陣から来た青年を監視・保護し、味方に取り込む任務を遂行していたわけでもあるのだけど。
行きつけの食堂で嵐が過ぎ去るのを待つ二人。やりとりを見る限り、この頃から惹かれあっていたようですね。ハプニング壁ドンで意識し合って顔を赤らめる二人😊
嵐が去った後、ルッケンヴァルデ機甲学校に戻った二人を学長のハルトマンが呼び止め・・・。
現在に戻り、地下室での二人。意識を失ったクラウスの顔にそっと触れ、キスをするタキ。タキの目から涙がぽとぽととクラウスの顔にこぼれ落ち、クラウスがうっすらと目を開き・・・。
クラウスが目を覚ましたところで次巻へ。
おだやかな二人のやりとりが楽しめるルッケンヴァルデ編に比べると、クラウスを伴って帰国してからのエピソードはしんどい展開の連続。
二人が味わっている苦しみに見合うだけの幸せな未来を描いてほしいなぁ。二人に早く幸せが訪れますように。

百日の薔薇 Maiden Rose Ⅰ

百日の薔薇 Maiden Rose Ⅱ

百日の薔薇 Maiden Rose Ⅲ


掲載誌:

百日の薔薇 第一話「我が騎士」 (初回限定生産)

百日の薔薇 第二話「宸華の者」 (初回限定生産)